異世界ファンタジーといえば男爵!知っているようで知らない実態とは?

『小説家になろう』と言えば、剣と魔法がある異世界ファンタジー!
恋愛の一強に変わっても、男爵だんしゃくなしでは成立せず?
今回は、やられ役に見えてしまうキャラを解説します。

モチャラス男爵という滅国のバカ

『オーバーロード』に登場する、リ・エスティーゼ王国のフィリップ。
彼が、「史実に近い男爵」と言えます。

行動する無能は消すしかない

飛ぶ鳥を落とす勢いのナザリック地下大墳墓だいふんぼ、対外的には魔導国。
けれど、リ・エスティーゼ王国は派閥の争いで、現実を見ようともしない。

王国で独自に動いたのが、フィリップ・ディドン・リイル・モチャラス!

ハンス・フォン・ゼークトの組織論で、無能な働き者。
「すぐ始末しろ!」と叫びたくなるが、それだけに予想できない……。

フィリップは、底抜けのバカだからこそ、操り人形にされた。
そして、アルベドの大失態へ!?
この選択により、王国は大きく揺れる。

全てのキャラを混乱させた傑物

一番下である男爵。
他の貴族のご機嫌をうかがいつつ、サロンで過ごす。

フィリップも、上位貴族が動くときの費用を出し、出兵する定め。
同じ派閥であれば、相互扶助となり、他が手を出しにくいメリットも。

ところが、アルベドの威光で、リ・エスティーゼ王国の表舞台へ……。

参謀のアルベド、デミウルゴス、同じだけの知略をする黄金ラナー。
フィリップが盤面をひっかき回し、誰もが悩み続ける♪
無敵のナザリックにも気を遣わせた男爵は、『オーバーロード』のMVP!

男爵になった理由に説得力がある

最底辺であっても、バカを当主にするのは不可解。
次期当主に資格がなければ、親戚か、派閥の貴族から養子にします。

モチャラス男爵となったフィリップは、教育のない三男。
長子相続ちょうしそうぞくで、次男はスペア、あとは家督を簒奪さんだつしないよう、わざと無知に……。

長男と次男が立て続けに亡くなり、正当な血筋のフィリップにお鉢が回ってきた。
本来なら、兄2人の顔色をうかがいつつ、こそこそと生きるだけの身。
棚ぼた式の幸運で、小なりとも貴族の一員に。

日本も、次男から下を奴隷のように扱っていた地域がありました。
戦後ですら、長男にだけ進学を認めることは普通。
繰り上がって家長になれば、フィリップのように暴走した場合も……。

かませ犬のフレーゲル男爵

『銀河英雄伝説』に、門閥もんばつ貴族のフレーゲル男爵がいました。
スペースオペラだから、「惑星1つが領地」という物語。

フレーゲル男爵という貴族主義

フレーゲル男爵は、銀河帝国のラインハルト・フォン・ローエングラムの宿敵。
どんどん出世するラインハルトをよく思わず、自分の叔父おじであるオットー・フォン・ブラウンシュヴァイク公爵こうしゃくと協力して潰そうとするも……。

選民思想に染まり、嫌みったらしい。
リメイクの『銀河英雄伝説 Die Neue These』でイケメンになったが、インパクトに欠ける。

公爵と男爵の話し合いにより、ラインハルトや帝国について学べる。
現状を理解すると同時に、この2人を憎むように。
けれど、彼らがいなければ、『銀河英雄伝説』はつまらなかった。

超光速加速装置や惑星サイズの要塞ようさいがあり、領地もダイナミック!
叔父の七光りで態度も大きく、ストーリーを動かしているが、男爵の参考にならず。

封建主義で上に逆らうことは禁忌

剣士たちの無惨むざんを描いた『シグルイ』と同じく、封建主義で上に逆らうことは不可能。
どれだけ理不尽でも、主君に従うのみ。

リ・エスティーゼ王国と銀河帝国のどちらも、民は奴隷と同じ。
『銀河英雄伝説 Die Neue These』で、中世のような荷馬車に乗る老人の上を巨大な宇宙戦艦が飛んでいくシーンも……。

それを当然とした世襲は、生まれつきの序列へ。
フィリップは貴族の下っ端に甘んじる父親を軽蔑けいべつしつつ、その仕組みを壊したい。
いっぽう、フレーゲル男爵は、勝ち組として今の仕組みを守りたい。

お馬鹿のフィリップが当主になったモチャラス男爵家の領地は、小さな村。
僻地へきちにしては立派な屋敷と服があり、酒にも困らず。
だが、貴族同士の付き合いで必要だろうし、上位の貴族が来たら接待も欠かせない。
父親は泥にまみれて、貴族のサロンでも平身低頭。

世襲貴族のゆがみを丁寧に描いた

2人の男爵は、対照的。
同じ爵位であるが、片や踏みつけられる側で、もう片方は何でも手に入る。

時代の変化によって、代々の栄華はあっさりとついえることが共通……。

自分勝手で、他人の迷惑を考えない。
しかし、どちらの心情もよく分かるため、「人間に見えない」とならず。

フィリップは、自分が当主になれない家への恨みと、なれても苦労することへの怒り。
一種の破滅願望であって、パーティーでアルベドを誘った時にも、「無礼討ちで、構わない。誰もやったことがない偉業を成し遂げた名が残る」と思っていそう。

史実の男爵は小さな領地を経営

現実の男爵は、顔役がそのまま領地を安堵あんどされた。
あるいは、戦功を立てて、爵位と領地をもらう。

国王または上位貴族による任命

国王(皇帝)が爵位を与えることで、貴族になれます。
ちなみに、上位貴族は複数の爵位を持っていて、その領地を治める代官としての貴族も。

貴族であるのは、当主だけ。
どの国にも貴族院があって、「正当な血筋で用件を満たしているのか?」を精査します。
次期当主と言えども、審査を通ることが必須。

サロンに貴族が集まっている、一枚絵。
せまい社会で過ごしており、お茶会やパーティーに呼ばれないことは一巻の終わり。
『銀河英雄伝説』にも、社交界から締め出され、後継者さえいない、ウィルヘルム・フォン・クロプシュトック公爵のエピソードが……。

フレーゲル男爵で分かるように、貴族社会のポジションが物を言います。
大貴族の後ろ盾があれば、伯爵はくしゃくにも気を遣われる。
というか、男爵は練習台にすぎず、将来的にもっと上の爵位を継ぎそう。

小さな領地から税と労役を納める

現実でも、町長選挙は死に物狂い。
顔と名前が一致する人数で、その得票数を競うから……。

異世界ファンタジー、SFであっても、男爵は統治している民との距離が近い。
舐められるのは論外とはいえ、「搾りとるだけで助けてくれない!」と思われれば、いずれ土地を捨てるか、領主の館を襲撃するだけ。

先代のモチャラス男爵は、貴族でしか行えない調整や、上への嘆願をしていたっぽい。
だから、塗炭とたんの苦しみであっても、「領主も頑張っているから」と我慢する。

戦争になれば、領地に見合った戦力を提供する義務も。
フィリップが男爵になれたことも、それが関係しています。

いざとなれば先頭に立って戦う

貴族とは、軍の指揮官!
近代でナポレオン・ボナパルトが出てくるまで、わずかな貴族が指揮をとっていました。
分かりやすく言うと、貴族の家は士官学校。

女は前線に出向きませんが、男は自分で着脱しやすい軍服のようなデザインが多い。
命を懸けて外敵から守ってくれるから、領民は税を納め、労役と戦争へ出向く。

今の知事とは違い、軍の指揮官も兼ねていました。
同じ国であっても味方とは限らず、必要とあれば、武力で対抗する。

領地の最小単位であり、占領しても統治しなければならない。
ゆえに、戦いで領民と物資を減らさず、実績のある男爵に続投させたほうが賢明。

貴族の一番下で分かりやすい

ラノベで多いのは、貴族の一番下だから。
主人公やヒロインを悪者にしたくない場合に、色々と代行してくれる。

犠牲にするヘイト役として便利

前述した男爵2人で分かるように、犠牲になるキャラが多い。
あるいは、思わぬ情報を得るといった、役回り。

主人公とサブキャラだけでは、寂しい。
そんな場面でも、男爵令嬢のような格下がいれば、無理なく会話が進む♪

高位貴族の令嬢の婚約者が、最底辺の男爵令嬢にとられることも……。

ナーロッパしか知らない読者でも、「上位貴族は、そうそう変わりがいない」と実感。
そうでなければ、ありがたみを感じられず。
いっぽう、男爵令嬢なら、どれだけ出しても不自然ではない。

子爵と比べて知名度がある

男爵の1つ上が、子爵ししゃく
けれど、ラノベで登場することが少なく、男爵と比べて分かりにくい。

子爵のさらに上が、伯爵。
ドラキュラ伯爵が代表例で、知名度だけで言えば、男爵と双璧そうへきをなす。

伯爵から、上位貴族です。
それゆえに、子爵は幅が広く、男爵と変わらないレベルから将来の大貴族まで。
「下位貴族ではなく、未来の侯爵こうしゃくさま!」という、逆転エピソードも……。

上と下の差を表現するには、上位貴族と男爵にするのがベスト!
顔を見ただけで相手を識別するのが貴族で、ラノベの展開はあり得ないですけど。

騎士爵と準男爵は貴族ではない

設定によりますが、騎士は貴族にあらず。
騎士爵きししゃくは一代限りで、貴族に仕えることが大前提。
ただし、「伯爵が騎士団長を務める」というケースもあります。

準男爵は名誉職というか、1つの称号。
「普通の市民より凄いよ!」というだけで、貴族ではありません。
そこから実績を積み上げて、本物の男爵になることも!?

なろうで乱発されている、爵位。
リアルに100人以上の男爵がいたこともあり、他より気軽に与えられるようで。
現代でも、正当な血筋を探して復興するケースがありました。
貴族同士のネットワークは、現代でも欧州やアメリカを動かすほどの資金?

男爵は、認定した国へ貢献する義務を負う。
なろう主人公はポンポン受けていますが、割に合わないポジション。
そもそも、爵位は領地とセットで、領地がなければ義務だけ。