どこにでもいそうな女子の奮闘。
「雪村あおい」が歩いていくのは、日本の歴史?
信仰から始まり、近代登山に繋がった経緯を、ご覧あれ!
登山の歴史
山岳信仰における、修行の場。
修験道が有名であり、近代に開山されたケースも多い。
修行の一環としての登山
山には、神が宿る。
富士山は浅間信仰、白山は白山信仰、大峰山も修験道で有名……。
修行として道が整えられ、行場へ。
一般人が立ち入るというより、修行と巡礼。
記録に残った初登頂は寺の上人(高僧への敬称)が多く、山頂に小さな祠、石仏がある。
それとは別に、生活する人々もいた。
『鬼滅の刃』の竈門炭治郎、『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』の比古清十郎の陶芸など。
- 炭焼き
- たたら製鉄
- 陶芸
- 薬草などの採取
- 林業
オオカミは明治時代に絶滅したが、クマ、鹿、イノシシは別。
里山で暮らすのは、命懸け。
自然豊かな山奥から立ち上るは、炭焼き、陶芸窯の煙……。
娯楽から近代登山へ
江戸時代に、公に開かれる開山。
富士山へ登る富士講といった、信仰グループも結成された。
他には、御嶽山も有名。
明治維新によって、西洋アルピニズムが登場!
測量と地理学、学術的な登山、山岳会も登場しました。
日本の山々を広く紹介したウォルター・ウェストンが、象徴的。
この時点で、登頂そのものが目的に。
戦後の復興にともない、庶民の生活水準が向上。
ロープウェイの整備、低山ハイキングの普及、中高年の登山ブーム、百名山と、健康や観光がメインになった。
雪村あおい達は、登山の事故などを踏まえて改良されたウェア、登山靴を使用。
技術の進化によって、だいぶ環境が良くなりました。
夏山と冬山は全くの別物
同じ山でも、いくつかの登山コース。
プロが現地を調べている『山と高原地図』が有名で、60年以上の歴史を誇る。
GPSで現在位置が分かるアプリも、登場。
冬山は難易度が高く、積雪による道の消失や、吹雪による体温低下。
風速が倍以上で、気温マイナス20度という過酷さ。
登山の地図も、基本的に夏用(無積雪)です。
冬季は山小屋も閉鎖されて、地域によっては入山規制。
アイゼン、ピッケルのような専用装備と使いこなしが必須で、前の季節に下見とデポ(物資の仮置き)をしたうえで臨むパーティーもいるほど。
登山は自己責任だが、救助要請を無視するわけにもいかず。
二次遭難の恐れも無視できず、費用請求といった問題が議論されている。
自分の記録が商業化
自分の登山を、写真とイラスト付きで紹介。
備忘録として始めた同人誌は、聖地巡礼のアニメにまで成長!
ヤマノススメは同人発
しろ先生は、同人誌で「雪村あおい」たちを描く。
可愛いキャラに解説させたほうが、同じ内容でも読まれるから……。
意外かもしれませんが、コミケは一般向けの同人誌も多い。
実は、全体の70%ぐらいが健全。
アニメーター、イラストレーター、作家などのプロがいる。
商業ベースに載せられない作品をそこそこの値段で販売しつつ、交流。
むろん、素人による活動もあって、プロとアマを行き来する人も。
『ヤマノススメ』も、その1つ。
『終末ツーリング』でも、東京ビッグサイトの廃墟に、手書きかコピー本の同人誌。
たった1つの販売ブースに、「最後まであがく!」という、書きなぐり。
原作者の体験だからリアル
登山は、あっさりと死傷者が出る。
日本の山はどれも険しく、登山道をそれれば、滝となっている沢へ行きつく。
『ヤマノススメ』は、山ガールに代表される登山ブームに乗っかり、同人誌から商業へ。
しろ先生の実体験に基づき、登山の危険と楽しさを同時に学べる。
何よりも、主人公の「雪村あおい」が引っ込み思案で、読者と同じ目線。
男子はいるが、あおい達に絡まない。
仲良しグループは女子同士で、クラス単位としてのモブだけ。
親の存在感も大きく、「登山は危険?」のような問題提起や、あおいが成長した後の初心者としての役割を果たす。
高尾山のように、地元で日常的に親しまれている観光スポットも。
聖地巡礼に貢献したうえ、モデルの聖望学園中学・高等学校から好意的な反応。
初心者向けとしての完成形
「雪村あおい」の視点で、高校入学の不安や、女子同士のコミュニケーションを表現。
再会した「倉上ひなた」と、登山にチャレンジ♪
初心者のあおい、同学年で経験者のひなた、彼らの親、店のスタッフ。
それぞれの立場で語られるから、物語に厚みが出た。
『ヤマノススメ』の通り、これは登山への誘い。
多くの死傷者が出ているため、その原因と予防策を交えつつ、あおいの視点で学ぶ。
壁をよじ登るクライミング、冬山については、関係ない。
等身大のあおいは、インドアの女子も達成できるぐらいの目標へ向かうだけ。
本当は怖い富士山
日本を代表する山として有名な、富士山。
浅間神社の他に、早くから庶民が登ったことでも歴史的……。
世界的に難易度が高い山
富士山は、高所への登山。
軽装のスニーカーではなく、登山靴、防水効果がある防寒具が必要。
ヘッドライト、飲み物と非常食も。
一般的な吉田ルートの五合目からでも、片道7km。
約1,400mのアップダウンがある。
急な岩場となる場所の上り下りだから、往復10時間以上。
これは、休憩を含まない計算。
山頂までの道が整備されていて、初心者でも登頂可能。
ただし、途中の山小屋は物価が高く、繁忙期には多くの登山者と詰め込まれる。
ゴミの処分や荷揚げでコストがかかるため、仕方ない。
登頂の成功率は、50%ぐらい。
その理由として挙げられるのは、標高2,000m以上による高山病です。
五合目で1時間ぐらいの休憩をはさみ、ゆっくり登ることが大事!
冬の富士山は重装備の人が飛ぶ
1~2月の厳冬期は、エベレスト級。
気温マイナス30度以下で強風がふきあれる極寒へ。
冬季登山は、原則的に禁止。
氷になった斜面がよく見られて、アイゼン(靴底の金属の爪)が刺さりにくい。
アイスバーンで滑落すれば、おろし金のようなところで数百メートルを加速し続ける。
数十キロを背負った登山者が、突風で吹き飛ばれた事例も。
山小屋ですら、冬季は基本的に閉鎖して、住み込みの管理人とスタッフも下山。
場所によっては腰まで埋まるような積雪に、誰でも滑ってしまう、氷の斜面。
風をさえぎる部分がなく、突風を受け続けての体力消耗や落下。
海外でも活躍したベテランですら、天気と風の方角に恵まれなければ、登れない。
風は山頂が近くなるほど強く、45度のアイスバーン斜面で受ける。
前へうつ伏せに倒れるような耐風姿勢は滑りやすく、そのまま滑落という……。
ヤマノススメでも最終目標
登山に慣れてきた「雪村あおい」の最終目標である、富士山。
興味深いのは、彼女を登山部やガチ勢とはっきり区別していること!
特筆するべきは、高山病の苦しみ。
あおいの変化、心の声によるモノローグが、共感を誘う。
インドア派で体力不足とはいえ、高度上昇の息苦しさは誰にでも起こりうる。
山頂での達成感は、登山を知らない人にも伝わってくるほどの臨場感……。
あおいには、親友の「倉上ひなた」、他にも「青羽ここな」といった友人がいる。
登山や人間関係に悩みつつ、ゆっくりと成長していく。
リアリティがある体験こそ至高
「自分も体験できるうえ、現地でなければダメ!」
埼玉県飯能市は、理想的な聖地巡礼へ。
なぜ聖地巡礼として成功?
『ヤマノススメ』の成功には、7つの理由がある。
- 現実的に行ける場所が主な舞台
- 内容をそのまま再現できる
- 成長ストーリーとしての追体験
- 地元との長期的な連携
- 街並みや背景が現地と一致している
- 長く続けられる登山に直結
- 女子がアウトドアで挑戦する希少性
聖地巡礼の楽しみは、原作の1シーンの再現、または、モデルの発見。
そのために、『ヤマノススメ』は最大限の効果!
自分の失敗を反省して、次に活かす。
男子もいるが、クラス単位。
主人公たちの親も、登山の危険性を指摘している。
だから、行政や学校も認めやすい。
自分がやりたいことの疑似体験
登山は、日本でポピュラーな趣味。
死傷者が出ていることも有名で、「雪村あおい」の母親はずっと反対する。
引っ込み思案の「あおい」が母親を説得する様子は、序盤の白眉!
高齢者が日課として行き来する低山から、プロが命懸けでチャレンジする冬季登山まで。
山と言っても、その難易度はピンキリ。
斎藤楓が行っている、山頂から別の山へ向かう縦走では、テント泊も。
自分の部屋が定位置だった「あおい」は、登山に慣れていき、世界を広げる。
まさに等身大で、自分がやりたいことの疑似体験♪
山で必要なのは撤退する勇気
北海道のトムラウシ山で話題になった、他人の遭難に無関心な登山者。
救助による共倒れや捜索への参加、警察の事情聴取、実況見分による拘束。
それらを嫌い、倒れている人を無視するケースが目立ち、物議を醸した。
山に登れば、低体温症、低酸素、滑落、道迷いで、たやすく死ぬ。
そのうえ、温泉旅行で数日の滞在と同じぐらいの予算、連休をかけていれば……。
「せっかく、来たのだし!」
この考えで多くの登山者が息絶え、凍傷によって指を切断する羽目に。
貴重な休みとお金を費やした計画を中止するのは、断腸の思い。
けれど、山は逃げません!
『ヤマノススメ』のあおいと一緒に、撤退する勇気を学びましょう。
